神経麻痺には非常に多くの疾患や外傷、不良姿勢、筋肉靭帯などの圧迫などがあります。
この中で今回は橈骨神経麻痺の興味深いタイプについてご報告します。
まずは腫瘍随伴症候群によるもの、シェーグレン症候群などによるNLDSFN
と言われるもの、アミロイドーシスなどは除きます。
麻痺は神経障害部位の高さにより異なります。
上腕部ではドロップハンド
肘のあたりではドロップフィンガー(後骨間神経麻痺と呼ばれます)
今回は上腕骨骨折後の麻痺の方です。
麻痺形態は後骨間神経麻痺、知覚障害はほとんどなしですがはっきりした
ドロップフィンガーです。不思議ですね。
上腕骨部分での麻痺ではドロップハンドとなるはずです。
そして肘関節やや遠位に非常に強い圧痛を認めました。
こういう時はエコーで障害部位を確認すべきです。
この部位を見てみますと
低エコーで2倍以上に腫大した橈骨神経が観察されました。
ドプラーを入れましたが血管ではありませんので血流なしです。
黒い塊が移動してますがこれが橈骨神経です。強い圧痛もあり炎症も十分考えられます。
液性剥離をエコーガイド下に行いました。
強い圧痛は早期に改善しましたが麻痺は2か月後少しだけ改善傾向(総指伸筋の
筋力改善)のみです。しかしエコーでは
黒い塊(橈骨神経)は明らかに腫大が改善しています。
わずかな臨床症状の改善とエコーでのはっきりした改善から十分回復する可能性が
高いと思われました。文献的には3か月経過した後骨間神経の強い麻痺は手術が
必要とされています。
そして発症から三か月後、運動麻痺の改善は著しく臨床症状は心配ない状態となりました。
三か月後のエコー画像です。
見事に正常になりました。
このように末梢神経はエコーにて観察が十分できるということ、そして障害部位の
推定や改善経過も観察できるかもしれません。障害神経をエコーで観察すると
様々な情報が得られることがあります。
末梢神経麻痺には非常に多くの原因があります。
このようなケースは例外的かもしれませんが
しっかりした病歴、身体所見、血液検査、CT,MRI、電気生理学的検査などが
正確な診断に必要です。それに加えてエコー検査を追加することにより
より一層具体的な治療方針を立てることができる可能性が出てきました。
総合力で診断、治療する分野です。診断に時間もかかることもありますが
よろしくお願いします。
最後までお読みいただきありがとうございました。